1962年に20歳でデビューを果たしたボブ・ディラン/Bob Dylanは、自分の名前をタイトルにしたデビューアルバムこそトラディッショナル・ソングのカバー集だったものの、1963年のセカンドアルバム、Freewheeling/フリーホイーリンは、ギターとハーモニカの弾き語り路線を継承しながらも、全曲自作の曲を収めた。代表曲となっている「風に吹かれて/Blowin' In The Wind」もここに含まれている。他にも「戦争の親玉/Masters of War」など、プロテスト・ソングが数曲収録されている。後に発表された未収録曲の中にも相当数のプロテストソングが録音されていた。
サードアルバム、「時代は変わる/The Times They Are A-Changing」は過半数の曲がプロテストソングだった。
彼のプロテスト・ソングの特徴は、事実を淡々と歌ったり、質問を投げかけたりして、聞く人に考えさせる歌が多いこと。 当サイトではこれら2枚目と3枚目のアルバムから多数ご紹介している。
ボブ・ディラン/Bob Dylanは次のアルバムからプロテストソングをほとんど書かなくなる。それは、自作の歌が公民権運動や反戦運動のテーマ曲のようになったことで、彼自身が運動のリーダとして期待されるという、自分では望まない、大変な状況になってしまったことがその理由のひとつである。
ボブ・ディラン/Bob Dylanはプロテストソング以外にも様々なメッセージ性のある歌を作ってきたが、彼のもっとも評価すべきところは芸術的な歌詞の表現であると思う。単語の選び方、表現方法、韻の踏み方、どれをとっても芸術的だと思える。そして、この芸術的なスタイルを自分の音楽スタイルをロックバンドスタイルに変えることによって、ビートルズ/the Beatlesをはじめとする多くの第一線で活躍していたロック・ミュージシャンに大きな影響を与え、ロックの歌詞を芸術の域に押し上げた。2016年のノーベル文学賞を歌手として初めて受賞した理由はこのようなところにあるのではないだろうか。
ボブ・ディラン/Bob Dylanは半世紀に渡る音楽活動の初期にプロテストソングを大量生産したが、その後も時々プロテスト・トピカルソングを発表してる。
このページではボブ・ディラン/Bob Dylanの当サイトに未掲載のものも含めておすすめの優れたプロテスト・ソングをご紹介する。
当サイト内の ボブ・ディランの曲 |
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セカンド・アルバム、Freewheelin' から 戦争の親玉/Masters of War 風に吹かれて/Blowin' In The Wind オックスフォード・タウン/Oxford Town サードアルバム The Times They Are A-Changing から 時代は変わる/The Times They Are A-Changing 神が味方/With God On Our Side ホリス・ブラウンのバラッド/The Ballad of Hollis Brown ハッティ・キャロルの寂しい死/The Lonesome Death of Hattie Caroll しがない歩兵/Only a Pawn in Their Game メドガー・エヴァース/Medgar Evers という黒人の公民権運動活動家が 家族が待つ家の前で銃殺された事件を歌っている。 直接手を下した犯人は陪審員が全員白人の法廷で、有罪にならなかった。 この歌は、犯人は何かの組織の下っ端の歩兵に過ぎないと歌っている。 1963年のワシントン大行進で歌っている貴重な映像。 |
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当サイトで未紹介のおすすめ曲
激しい雨/A Hard Rain's Gonna Fall
戦争の悲惨さとアメリカ社会の病的状況を歌った長編曲。
第三次世界大戦を語るブルース/Talking World War III Blues
デービームーアを殺したのは誰?/Who Killed Davy Moore
プロボクサーが試合中に死んだ。誰が責任を取るのだ、と問いかける歌。公式アルバム未収録。
ジョン・バーチ協会を語るブルース/Talkin' John Birch Paranoid Blues
アメリカの極右の政治団体を揶揄する歌詞。公式アルバム未収録。
ハリケーン/Hurricane
黒人ボクサーが冤罪で殺人犯に仕立てられた事件を歌っている。8分にも及ぶ超大作で、1975年発表のアルバム、欲望/Desire の1曲目に収録。
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