プロテストソング・トピカルソングの傑作集We Shall Overcome
老人は国会(突入)をめざす
パギやん(趙博)/藤村直樹

60年代後半から関西地方で活動していたフォーク・シンガー、後に医師になるが、小泉改革の頃、1999年に週末に歌うことを始めた藤村直樹。彼は2006年には医師の仕事を休業して小泉改革による医療崩壊を調査することに専念する。そして翌年、「老人は国会突入を目指す」を制作し、発表した。

定年を過ぎてゆったりと生活できると思いきや、年金は減り、医療費は高騰し、もう生きるのだけで精一杯になり、これ以上我慢できなくなった全国の老人たちが集まり、立ち上がって国会へ突入するというストーリー仕立ての長い曲だ。

その10年後の2017年、「アベ・イズ・オーバー」を発表したパギやんこと、趙博 が歌詞とタイトルを若干修正して、ミニアルバム、「ワテらは陽気な非国民」「アベ・イズ・オーバー」とともにこの「老人は国会をめざす」を収録した。ここでは修正後の歌詞をご紹介する。(オリジナル歌詞が紹介されているブログ記事)

現在、下流老人という言葉が生まれるくらい、お年寄りの中での貧富の差が拡大し、大きな問題になっている。まだ今は若い人たちが後に老人になる頃にはもっとひどい状態になるかも知れない。 老いも若いも一緒に聞いて、歌って、あわよくば本当に国会議事堂の前での抗議活動に立ち上がることを願いながら、この曲をご紹介する。

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老人は国会をめざす
パギやん(趙博)原詩:藤村直樹


日本中の村から、町から、都会の谷間から 
車椅子で、松葉杖で、老人たちは国会を目指す
よたよた、よぼよぼ、こけつまろびつ 
ぜいぜいと這いずりながら政府を倒すために

その夜中メールは日本中をとびかった 
老人よ、見捨てられた者たちよ! 
国会をめざせ、政府を倒すために!

その2日前、ついに保険料は年金より高くなった 
日本中の僻地から郵便も小包も消えた 
病気になっても医者にかかれない 
だいいち医者まで行くこともできない 
治療薬は高過ぎて、もらった院外処方箋を破る

ひ孫はもう産まれない、いや、孫はもう産めないのだ 
産科の医者は過労で倒れ、金持ちだけがアメリカへ産みにゆく

たった2パーセントの金持ち達が日本の富の95%を持ち 
貧しい者は孫子まで生きていくことさえおぼつかないのだ

初夏の夜中、少し痴呆症のオタク老人が思い出した 
そうだ、俺たちは団塊の世代、果たせなかった国会突入を!

その夜中 メールは日本中をとびかった 
老人よ、見捨てられた者たちよ! 
国会をめざせ、政府を倒すために!

追い詰められた首相はついに国防軍へのホットラインをとった 
老人達のデモ隊に発砲せよ!

兵士たちは とまどった、自分たちの爺さんや婆さんを  
撃ち殺せとの命令に兵士達はとまどった
それでもアメリカ軍から派遣された司令官は命令した 
引き金を引かなければお前たちは軍法会議だ! 
泣きながら兵士たちは機関銃を発射した

何万発の銃弾がしわくちゃの皮膚を裂き 
しなびた肉を、骨粗しょう症の骨を粉々に打ち砕いた

それでも老人たちは怯まなかった、失うものは命さえ、もう何もない 
ワシ等の世代は必死で生きてきたのだ

たとえ精鋭の国防軍でも何百万の爺さんを 
何百万の婆さんをすべて射殺することはできない

ついに国会正面を突破した、血まみれの爺さんと婆さんと 
兵士たちは抱きあった、泣きながら共に 国会議事堂へ行進した 
するとひとりの婆さんが赤く血に染まったTシャツを議事堂のてっぺんで
高々と振りかざした、日本国政府に 止めを刺すために

この話を聞いたあなたはたわごとと言うだろう 
けれどこの国はきっと、あの夏の夕暮れに向かって進んでる

 
趙博/パギやんの曲 
アベ・イズ・オーバー 
正義のために監獄へ 日本語版

民衆の歌 日本語版
 
                                    
藤村直樹のオリジナル


                                    
砂布均のカバー