プロテストソング・トピカルソングの傑作集WE SHALL OVERCOME
一台のリヤカーが立ち向かう
中川五郎


中川五郎
が2017年に発表した2枚組アルバム、「どうぞ裸になってください」に収録して発表されたが、2011年1月にはもう完成して、動画までアップロードされている。歌の内容は、タイトルにある、1台のリヤカーにアンプなどの必要機材を積んで、横須賀港が原子力空母の母港になることに反対するデモの先頭で、あるいはデッキでの署名運動の場で、ギターやバンジョーをかき鳴らして反対の意思を表し続けたフォーク歌手、村松俊秀氏と、彼と同じように一人で反対を叫んで世界を変える先駆けになった人々を紹介しながら、どんな運動でも一人から始めることができるということを訴えている。原発建設反対の闘いも含まれるが、この動画発表から2ヶ月後に東日本大震災が起こり、福島第1原発の事故が起きたことは象徴的である。そして原発事故後には、日本でも一人で恐れずに行動を起こした人が何人も出てきたのではないだろうか。原発事故後に政治家に転身して国民目線で国会で論戦を張る山本太郎議員、森友学園問題で勇気を出した元官僚の前川喜平氏、東京新聞記者として一人気を吐いている望月 衣塑子記者、他にもまだ出てきそうだ。

登場する人々(写真左から)
村松俊秀氏(50歳で他界)
中国電力の上関原発建設のために海を埋め立てる工事が強行されたとき、シーカヤックに乗って抗議活動を行った清水敏保氏。関連動画
民衆蜂起、インティファーダで最初に石を投げつけたパレスチナの人々
黒人差別に抗議して白人にバスの座席を譲らなかった黒人アメリカ人女性、ローザ・パークス/Rosa Parks
ギターに「このマシーンはファシストを殺す/This machine kills Fascists」 と自分のギターに書いて、民衆の歌を歌い続けたフォーク・シンガー、ウディ・ガスリー/Woody Guthrie
チリのシンガーソングライター、ビクトル・ハラ/Victor Jara



この歌の最後の方には、アメリカのトピカルソング、ピート・シーガー/Pete Seeger 作の One Man's Hand/一人の手 が和訳されて挿入されている。この歌のメッセージは、一人だと何もできないが、二人、10人、100万人と人が増えれば変えられるという趣旨の曲である。いずれこのサイトでも紹介したい歌である。



歌詞の下に掲載した2018年の動画では沖縄県辺野古に関する歌詞が追加された。そして、辺野古基地建設に反対するデニー玉城知事が誕生した沖縄で辺野古への米軍基地「移設」の是非を問う県民投票が行われることが決まった。 ところが、2019年1月に5つの市がこの投票に参加しないことを表明した。これは沖縄県民の投票権に不公平を与える非民主的なことだと抗議し、署名運動を始めた27歳の青年、元山仁士郎(もとやまじんしろう)氏が、なんと1月15日午前8時から宜野湾市役所前でハンガーストライキを行っている。この一人の小さな動きをきっかけに日本の良心的市民は全国民を動員するような大きな変化を起こせるだろうか。彼の活動がこの歌の新しい歌詞として追加されるほどの歴史的勝利につながることを祈りたい。

最新アルバム「どうぞ裸になってください」に収録されたバージョンの「一台のリヤカーが立ち向かう」ではピアノとコーラスを担当した沢知恵/Tomoe Sawaが、ローザ・パークスの節で英語で彼女のことばを挿入しているので聞く値打ちがある。



一台のリヤカーが立ち向かう



作詞:中川五郎

一台のリヤカーが立ち向かう
アンプやスピーカー積んだリヤカーが立ち向かう
横須賀の町に核を持ち込むな
横須賀の海に戦争の船を許すな
一台のリヤカーと歌い続けた男

※大きな世界を変えるのは
一人の小さな動きから

一艘のシーカヤックが立ち向かう
中国電力の船に立ち向かう
漁師たちの命の海を奪うな
上関に危険な原発はいらない
一艘のシーカヤックで抗議する若者
※くりかえし

一個の石つぶてを投げつける
戦車や軍隊に向かって投げつける
ここは僕らが生き続けてきた街ガザ
ふるさとや歴史守るインティファーダ
一個の石つぶてを投げる子どもたち
※くりかえし

一人の女性がバスの席に座る
黒人と白人に分けられたバスの席に座る
「立て」と言われても警官がかけつけても
彼女は「ノー」と言って座り続けた
その闘いから公民権が生まれた
※くりかえし

一台のギターが立ち向かう
弱い者いじめの国家や金持ちに立ち向かう
ウディ・ガスリーはギターのボディに書いた
このマシンはファシストを壊滅させると
一台のギターが美しい音をひびかす
※くりかえし

一台のギターが立ち向かう
独裁者の軍事政権に立ち向かう
スタジアムに連行され腕をへし折られても
ヴィクトル・ハラは殺されるまで歌い続けた
一台のギターがたくましい音をひびかす
※くりかえし

一人の手じゃ牢獄は壊せない
二人の手でも牢獄は壊せない
でも二人が100人、1000人、100万になれば
牢獄は壊せる
そんな日が来る
公式レコーディングは
「世の中は変えられない/られる」に変更


最近追加された歌詞 下の動画で歌われています。
一人の住民が座り込む
ゲートの前に座り込む
米軍基地を沖縄だけに押し付けるな
辺野古の海の豊かな自然を壊すな
引き抜かれてもまた座る人たち

※くりかえし

一台のリヤカーが立ち向かう
アンプやスピーカー積んだリヤカーが立ち向かう
横須賀の町に核を持ち込むな
横須賀の海に戦争の船を許すな
リヤカーと歌い続けた村松俊秀
※くりかえし

リヤカーと歌い続けた村松俊秀
※くりかえし

一人の小さな動きから
一人の小さな動きから
一人の小さな動きから
 


中川五郎 作詞
1923年福田村の虐殺
スポーツ・フォー・トゥモロー
受験生ブルース
風に吹かれて

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MOVIES
2018年11月のソロ・ライブ 辺野古の歌詞が挿入されました。



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