プロテストソング・トピカルソングの傑作集WE SHALL OVERCOME
カモメ
長渕 剛

長渕剛が原発事故の被害を受けた浪江町を訪ねて見て感じたことを歌にした。浪江町の子供たち20人を鹿児島でのコンサートに招待するなど、積極的に福島第一原発事故の被災者たちに寄り添う活動をしている。 原発事故から1年経った2012年5月に発売されたアルバム「STAY ALIVE」で発表された。

この歌と関連して、男たちの脱原発という名のTwitter BOTにより、次ような長渕のことばがつぶやかれ、拡散されている。

(酪農家の遺書を読んで)「このことを残さなきゃっていう思いのほうが強かった。見たからにはこれを飲み込んで、なかったことにはできないだろう?」
「その現場に立つと、一緒に生きてきた牛の乳を搾りそれを捨てる、その牛が死んでゆくなら俺も死ぬっていう気持ちが伝わってくる。そこに死してその酪農家が訴えたかったことが書いてあった」
「相馬の牛舎で自殺した酪農家のところに行った。そこに大きく『原発さえなければ』って書かれてた。話を聞くと、『弟は泣きながら乳を搾ってたんだ』と。どんだけつらかったかなあと思う」
「人の命の気配が消えるってことの怖さを初めて体感したな。ものすごい不気味で震えた。で、涙がボロボロ出た。これはダメだと。もちろん去年の夏に一緒にキャンプした浪江町の子供たちの顔も思い出したよ。『ああ、あいつらはこういうところから来たのか』」
「雪降るなか、まだ生きてる野良牛がフワーっと寄ってきて、こっちを見るんだよ。牛の番人の方は『どうせ仕事はねえし、俺の命もいくばくもねえんだから、防護服なんか着ねえよ』って、吐き捨てるように言ってる。人々の生きるという気持ちまでをも奪ってしまう」
(浪江町に入って)「目にしたのは、薬殺され穴に埋められ白骨化した牛たち、野良牛たち……その野良牛を捕まえる番人がいて1頭ずつ捕まえて殺して、墓場に入れるんだ」
「自分の故郷のことも思った。俺が育った鹿児島の川内にも原発がある。自分の故郷がこういうふうに人が消えて何もなくなる、しかも何十年も帰れないとなれば、これは原発の有無を問う以前の問題だ」
(再稼働について)「『何でなんだよ!』って。原発停められて困るのは、結局企業の工場だけなんだろうけど、でも、節電だってできたじゃないか。今、原発はほとんど停まっているけど不自由もない」


カモメ







作詞:長渕 剛

浪江の街の請戸の港
カモメの群れが飛んでる
秋のコスモスが咲いて
子供たちがはしゃいでる
請戸の海から魚たちも
川を上ってしぶきをあげてる

浪江の街の立野の丘に
牛たちの群れが生きてる
立ち並ぶ朝の牛舎から
生き物の匂いがあふれてる
男たちは藁を運び
毎日牛たちの背中をさすってる

だけど全てが消えてしまった
全てが無くなってしまった
子供の声も消えちまった
漁師の声も消えちまった
農夫の声も消えちまった
牛たちの姿も何もかもが
やせ細った野良牛たちの
瞳をどうやって見つめればいいの

僕が歩いてきた道は 正しかったのか!
したたり落ちてく命の
最後の最後の一滴を
コメカミに突きつけてみた
今一度問いかけてみた
僕たちが歩いてきた道は 本当に正しかったのか!

浪江の街の駅前の
ひしゃげたまんまの商店街
パン屋も床屋も雑貨屋も
命の音が聞こえない
全滅していた暮らしの中
壊れた信号機だけが点滅していた
僕はただ立ちつくし空を見上げて泣いた

男は牛たちの乳を泣きながら搾っている
来る日も来る日も毎日
泣きながら乳を搾ってる
捨てては搾って搾っては捨てて泣いてる
男は牛舎でつぶやいた
「原発さえなければ・・・」

秋のコスモス畑で
も一度君たちと会いたい
秋のコスモス畑で
も一度君たちと唄いたい
秋のコスモス畑で
君の背中を追いかけたい
請戸の海から昇る朝陽に
も一度抱かれて泳ぎたい

生きたいと叫びながら
消えてった農夫たち
生きたいと叫びながら
消えてった漁師たち
生きたいと叫びながら
消えてったあの時の夕焼け
やせ細った野良牛たちの
瞳をどうやって僕は見つめればいいの

浪江の街の請戸の港
カモメの群れが飛んでる
4本の煙突の向こう
何も知らずに飛んでる
低く垂れこめた真冬の空
ハラハラと白い雪が降ってた

止めてくれ原発を
止めてくれ今すぐ
母親から子供を引き裂き
子供から母親を裂く
乳房をくわえる赤子の
瞳をどうやって僕は見つめればいいの

帰りたいなあ
wow wow wow wow
帰りたいなあ
wow wow wow wow
生まれた場所へ
wow wow wow wow
帰りたいなあ
wow wow wow wow
命の音を抱きしめて
浪江のカモメが空を飛んでゆく

カモメよ飛んでくれ
カモメよ 空高く
高く 高く 高く 高く 高く
飛んでくれ
母親から子供を引き裂き
子供から母親を裂く
乳房をくわえる赤子の
瞳をどうやって僕は見つめればいいの

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