プロテストソング・トピカルソングの傑作集WE SHALL OVERCOME
Good Night Saigon
グッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌(レクイエム)

Billy Joel/ビリー・ジョエル

この曲はアメリカ兵たちのベトナム戦争体験を淡々と綴った静かなバラードである。 直接的に反戦を叫ぶわけではないが、その静かな語りが、強烈な反戦メッセージとして響いてくる。 これは怒りではなく証言の歌である。1982年にリリースされた ビリー・ジョエル/Billy Joel のアルバム、ナイロン・カーテン/Nylon Curtain に収録されている。

この曲の最大の特徴は、兵士たち自身の視点から描かれていることだ。ビリー・ジョエル/Billy Joel 自身は戦争を経験していないが、彼は従軍した友人たちの話をもとに、戦場にいた若者たちの心の風景を忠実に再現した。

ロシアでのコンサートでは「僕の友人は幼い顔でベトナムへ行ったが、帰還した時には老人の顔になっていた」と表現した。

この曲のイントロは最初は兵士たちを戦場へ送り込むヘリコプターが飛ぶプロペラ音で始まり、エンディングでも聞こえるヘリコプターの音は負傷した兵士を護送する時の音とも思えるようになる演出が成されている。


ここでは、印象的な歌詞の一部とその和訳を紹介しながら、歌の持つ意味を読み解いていく。

🎵 冒頭の歌詞

We met as soulmates on Parris Island
We left as inmates from an asylum

俺たちはパリスアイランドで同志として出会い
まるで精神病院から出てきた囚人のように出発した

パリスアイランドにある海兵隊の新兵訓練所で「同志」として出会った若者たちが、戦場へと送り出される。その出発は、まるで狂気の世界への旅立ちだった。兵士の目線から語られるこの描写は、戦争がいかに異常な環境であるかを無言で訴えている。

この続きに gun ho とあるが、これは元々海兵隊のスローガンで、「過度に熱狂的な」という意味である。中国語「工和(一緒に働く)」が語源。

🎵 「祈り」と「現実」

We put our faith in God and country
And the Marine Corps

俺たちは神と祖国、そして海兵隊を信じた

信仰、愛国心、軍への忠誠。兵士たちはそれらを心の支えとして前に進むしかなかった。しかし、この後に続く描写は、それらの「信じるもの」がいかに彼らを救えなかったかを浮き彫りにしていく。

🎵 サビ:静かな連帯の誓い

And we would all go down together
そして俺たちは皆、共に沈んでくだろう

このフレーズは、戦争の悲劇を最もよく象徴している。「共に沈む」とは、命を落とすこと、心を失うこと、そして国家に裏切られたことの比喩でもある。個々の死ではなく、「全体としての悲劇」として描かれている点が、この曲の静かな力を生んでいる。

🎵 日常の断片と死の影

We smoked the day's last cigarette
And we watched the tracers fly

俺たちは一日の最後の煙草を吸って
弾道が空を走るのを見ていた

兵士たちの日常には、「普通の行動」と「死の気配」が常に同居していた。ここでは戦争を批判する言葉は一切ない。ただ、そこにいた若者たちの「ありのままの時間」が描かれている。それだけで、戦争の異常さが際立つ。

🔍 プロテストソングとしての意義

この曲は直接的な反戦メッセージを叫んではいない。 だが、それゆえに力がある。体験を語ることそのものが、強いプロテストになる。彼らが何を信じ、何を失ったかを丁寧に並べることで、戦争という巨大な不条理が浮き彫りになる。

兵士たちの目線で描かれる戦争の実像は、国家の大義や正義を超えた、もっと個人的な「命の物語」だ。

ウクライナやガザ地区のイスラエルによるパレスチナ人に対する虐殺行為など、世界のどこかで常に戦争が続いている今、この歌は新たな意味を持ち始めている。戦争で得するのは誰なのか。決して兵士たちやその家族ではない。 ボブ・ディラン/Bob Dylan 戦争の親玉/Masters of War でも告発したように、現代の軍産複合体だけである。 戦争で武器を使うことで儲かる軍需産業こそが戦争の根源であることを忘れてはならない。

Good Night Saigon/グッドナイト・サイゴン〜英雄達の鎮魂歌(レクイエム) は、忘れてはならない記憶であり、決して繰り返してはならない現実の断片だ。

2018年のすばらしい演出のシェアスタジアム・コンサートでの演奏

Good Night Saigon
グッドナイト・サイゴン~英雄達の鎮魂歌

 
作詞: ビリー・ジョエル/BILLY JOEL

We met as soul mates on Parris Island
We left as inmates from an asylum
And we were sharp, as sharp as knives
And we were so gung ho to lay down our lives

We came in spastic like tameless horses
We left in plastic as numbered corpses
And we learned fast to travel light
Our arms were heavy but our bellies were tight

We had no home front, we had no soft soap
They sent us Playboy, they gave us Bob Hope
We dug in deep and shot on sight
And prayed to Jesus Christ with all of our might

We had no cameras to shoot the landscape
We passed the hash pipe and played our Doors tapes
And it was dark, so dark at night
And we held on to each other like brother to brother
We promised our mothers we'd write

And we would all go down together
We said we'd all go down together
Yes, we would all go down together

Remember Charlie, remember Baker
They left their childhood on every acre
And who was wrong? And who was right?
It didn't matter in the thick of the fight

We held the day in the palm of our hands
They ruled the night, and the night
Seemed to last as long as six weeks
On Parris Island
We held the coastline, they held the highlands
And they were sharp, as sharp as knives
They heard the hum of our motors,
they counted the rotors
And waited for us to arrive

REPEAT
和訳:管理人

俺たちはパリス島で同志として出会い
まるで精神病院から出てきた囚人のように出発した
俺たちは鋭かった、ナイフのように鋭かった
とても熱狂的に命を捧げようと考えていた

俺たちは荒くれ馬のようにやってきた
そして番号が振られた死体袋に包まれていなくなった
そして私たちは身軽で移動することを学んだ
腕は重かったが、腹は締まっていた

銃後の支えもなければ、お世辞の言葉もない
彼らはプレイボーイを送り、ボブ・ホープをくれた。
我々は深く潜り込み、見つけ次第撃ちまくった
全身全霊でイエス・キリストに祈った

景色を写すカメラはない
麻薬を手渡し、ドアーズのテープを流した
とても暗い闇夜だった
俺たちは兄弟のように互いに手を取り合った
そして母親に手紙を書こうと約束した

そして俺たちは皆、共に死ぬのだろう
そうだ、皆で死ぬんだ
そうだ、俺たち全員死ぬのだろう

チャーリーを、ベイカーを、覚えておこう
二人は子供時代を日々失って行った
誰が間違えた?誰が正しい?
戦闘の最中にはどうでもいいことだった

俺たちは昼は掌で把握できたが
奴らが夜を支配し、その夜は
6週にも及ぶように思えた
パリス島で経験したような
俺たちが海岸線を掌握し、彼らが高地を掴んだ
彼らは鋭かった、まるでナイフのように
彼らは俺たちのモーターが鳴らす音を聞いた
彼らはローターの数を数えた
俺たちが到着するのを待った

くりかえし
 Good Night Saigon Billy Joel ビリー・ジョエル グッドナイト サイゴン
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