ウディ・ガスリー/Woody Guthrie (1912年7月14日~1967年10月3日) はアメリカのフォークミュージックの基礎を築いたシンガーソングライターで、ピート・シーガー/Pete Seeger、ボブ・ディラン/Bob Dylan に大きな影響を与えたと言われている。 彼は昔から伝わる曲に時代に合わせた歌詞を乗せて曲を作っては歌うスタイルで曲を量産した。当然、時事的な歌詞のプロテスト/トピカルソングもたくさん残した。彼こそ、アメリカでの元祖プロテスト・シンガーなのである。そのウディ・ガスリーの代表曲がこの わが祖国/This Land Is Your Land。
1945年にリリースされたアメリカのフォーク音楽史において最も象徴的なプロテストソングのひとつであり、60年代のフォーク・リバイバル運動の中で広く普及された。
歌詞は、表面的には愛国的な讃歌のように聞こえる。繰り返しの部分では西の果てのカリフォルニアから東の果てのニューヨークまでというアメリカ合衆国全土を描き、他にはアカマツ林、メキシコ湾などアメリカの地名を散りばめながら連なっている。
しかしながら、実は深い社会批判と階級意識を内包している。ウディ・ガスリーは、当時ラジオで頻繁に流れていた アービング・バーリン/Irving Berlin が歌っていたアメリカの愛国歌、"God Bless America/アメリカに祝福あれ"に反発してこの曲を書いた。 この曲はアメリカを無条件に賛美する内容で ウディ・ガスリーはそれを「現実離れした楽観主義」と感じた。そして"This Land Is Your Land"に より現実的で包括的な視点からアメリカを描こうとして作られた。
タイトルの"This Land Is Your Land"は一見、国民全員の共有財産としてのアメリカを讃えているように見えるが、実際には「誰の土地なのか?」という問いを投げかけている。彼は土地や富が一部の人々に独占されている現実に対する批判をこの曲に込めた。
歌詞は基本的にアメリカ全土を旅して見える風景を牧歌的に、詩的に、旅人の目線から表現していて、子供向けの唱歌にすらなっている。第二のアメリカ合衆国国歌と言ってもよいくらいに多くのアメリカ人が知っている歌だ。正式な国歌を政府からの押し付け国歌ととらえるなら、「わが祖国」はアメリカ国民側から生まれた民衆のための国歌だと位置付けることができる。
ただし、それはウディ・ガスリーの強力なメッセージが含まれる節は削除された上でのことである。それらの歌詞は私有財産制度への批判、教会や生活救済事務所の影で飢える人々の姿を通して貧困と不平等を告発している。近年のカバーではその削除された歌詞が歌われることも多くなった。
数多くの歌手たちにカバーされているアメリカン・フォークのスタンダード。最近は2024年のボブ・ディラン/Bob Dylan の伝記映画、「名もなき者/A Complete Unknown」のストーリーにウディ・ガスリー/Woody Guthrie が登場し、ピート・シーガー/Pete Seeger がこの歌をうたうシーンがあったことが記憶に新しい。
イギリスのビリー・ブラッグ/Billy Bragg はイギリスバージョンを、カナダのザ・トラベラーズ/The Travellers はカナダバージョンをそれぞれ作っている。日本でもこのカバーでなくても良いので、庶民側から見た国歌なるものを誰かが発表してくれないものだろうか。
This Land Is Your Land
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作詞: WOODY GUTHRIE オリジナル音源の歌詞 *This land is your land, this land is my land From California, to the New York Island From the Redwood Forest, to the Gulf Stream Waters This land was made for you and me As I went walking that ribbon of highway I saw above me that endless skyway I saw below me that golden valley This land was made for you and me! I roamed and rambled, and I followed my footsteps To the sparkling sands of her diamond deserts All around me a voice was sounding This land was made for you and me! **When the sun comes shining, and I was strolling And the wheat fields waving, and the dust clouds rolling The voice was chanting, the fog was lifting, “This land was made for you and me!” * ** REPEAT *, ** 公式歌詞から除外された部分 There was a big high wall there that tried to stop me A sign was painted, said: Private Property, But on the back side it didn’t say nothing: This land was made for you and me. 実際に歌われたと言われる別歌詞 Well, one bright Sunday morning in the shadow of the steeple By the relief line I saw my people As they stood there whistlin' they stood there hungry Don't they know that this land was made for you and me? Well, as I was walking, I saw a sign there And on the sign it said "No Trespassing" But on the other side it didn't say nothing That side was made for you and me! In the shadow of the steeple I saw my people, By the relief office I seen my people; As they stood there hungry, I stood there asking Is this land made for you and me? |
和訳:管理人 *この土地は君の物、そして僕の物 カリフォルニアからニューヨーク島まで 赤松の森からメキシコ湾の流れまで この地は僕と君のために作られた 高速道路のリボンを歩きながら 上には果てしない空が見え 眼下には金色の谷が見える この地は僕と君のために作られた 私は歩き回って自分の足跡をたどった ダイヤの砂漠の弾ける砂に 僕の周りに声が響いてる この地は僕と君のために作られた **朝日が輝き僕は歩き続け 麦畑が揺れ、砂煙が巻き上がる 声が歌って、霧は晴れている この地は僕と君のために作られた *, ** くりかえし 私を止めようとする大きな高い壁があった 看板には「私有地」と書かれていた だけどその裏側には何も書かれていない 明るい日曜日の朝 教会の塔の陰で 救援物資を待つ人々が見えた 口笛を吹いて空腹のまま立っていた 彼らはこの地は君と僕のために作られたことを 知らないのか 歩いていると看板があった その看板には「進入禁止」とあった もう片面には何も書かれていなかった 教会の塔の陰に人々が見えた 救援物資事務所の横に僕らの仲間がいた お腹を空かせて立って訊いている この地は君と僕のために作られたのか? |
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映画名もなき者/A Complete Unknown で歌われたシーン |
オバマ大統領の就任式(2014❓)で削除された歌詞が歌われた!
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コンピレーションカバー企画 VISION SHARED 参加か歌手によるメドレー
ビデオのエンディング用に編集された動画の音源 ここでも削除歌詞が歌われている
ジョン・メレンキャンプ、ブルース・スプリングスティーン、アーロ・ガスリー、エミルー・ハリス、リトル・リチャード、他の豪華な顔ぶれ
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